[小説] 約束Ver2 ~プロローグ~

智美はいつもより朝早く目覚めた。今日は約束を果たす日で少し緊張していたせいもあるのだろう。

とりあえずシャワーを浴びた。昨日寝る前にも浴びたのだが、まだ少し時間があるので少しでも綺麗な状態でという事で浴びる事にした。浴室から出て髪を乾かし服を着たら丁度良いくらいの時間になっていた。

1泊分の衣装を詰めたトランクケースを持ち、玄関を出たところで深く深呼吸をして、「よし」と気合を入れたあと一歩を踏み出した。

 

始発の電車に乗り、途中で新幹線へと乗り継ぎ目的へと向かう。目的地に向かう途中も不安と興奮と緊張で気も漫ろで、移動や電車に乗っている時間を含めて4時間弱の時間があったにもかかわらず、気がつくと上野駅直前となっており心臓がバクバクと鼓動してやまなくなっていた。

電車が駅に到着し、駅のホームに降りた。

駅にある案内図を見ながら待ち合わせ場所の上野公園口への出口へと向かう。

改札を出て周りを見回していると、後ろから声をかけられドキッとして振り返る。

以前、写真で顔を見せてもらっていたので、見た瞬間にYである事がわかった。心臓が飛び出すほどの勢いでバクバクするのを押さえ、たどたどしく、

「お、おはようございます」

と声をかけると、

『おはよ』

と返事はしてくれましたが言葉が続かない。電話やチャットでは普通に話していたにもかかわらず、いざ目の前にすると人って言葉が中々出てこないようで、ようやく声を絞り出して、

「これからどうしましょうか?」

(う~ん。不自然だったかな・・・。)

『とりあえず行こうか。ついておいで。』

といって歩き出すYについていく。しばらく歩いているとYが、

『ずっと会う前から色々どんな事をしようかと考えたんだけどさ、まず智美の言葉はしばらく必要ないかと思うんだよね。』

「えっ?!」(???)

『つまり、僕への返事はすべて他の伝達手段でしてもらうっていうのが、いいかなと思ったんだよね。』

ほんの一瞬智美が返事する間も与えない程度の間をあけて、

『という事で、早速これつけてよ。』

と、Yが子供のようなワクワクとした顔でカバンから手のひらサイズの箱を取り出し、智美に差し出してきた。

智美は少し首をかしげながら受け取り、

(なんだろう)

と思いながら、箱を開けると見覚えのあるものが入っていた。

(なるほど、そういうことか。)

箱から出てきたのは、事前に私の歯形をとって作った特殊なマウスピースで、上下に分かれた2つのパーツで出来ている。

上のパーツは、馬蹄状の形をしていて、奥歯の部分はしっかり歯を包み込む形をしていて、前のほうは普通に口を開けたときに見える部分が普通に見えるように歯の裏側に綺麗にはまり込む構造になっている。

次に下のパーツは、同じく馬蹄状の形をしているが、上のパーツがU字の形をしているのに対し、舌のある部分に少し見るくらいでは本物の舌がついているように見える膜のガードが馬蹄状の歯型の内側に形成されている。

「これ、もう今からつけたほうがいいの?」

『うん。そこに喫茶店あるし、中に入ったらトイレにでも行ってつけておいでよ。』

「はい…。」(もう今から言葉しゃべれなくされるんだ。不安もあるけど、なんかゾクゾクもしちゃうかな…。)

少し行くと喫茶店があり、お店に入るとYから、

『僕が注文しておくから、トイレ行っておいでよ』

と、急かすように言われ、智美は先ほどの箱を持って化粧室へと入っていく。

化粧室内でまず上顎のパーツを取り出し、上顎に貼り付けるかのように馬蹄型のマウスピースをあてがい歯型と歯の位置を合わせて少し軽くかむと、奥歯の部分がマウスピースの型に綺麗に納まった。当然異物なので違和感は多少あるが特に痛みは感じない。マウスピースを触りながら揺すってみるが触る程度ではぐらつかない十分な出来であった。

続いて下顎のマウスピースを取り出し装着する。下顎の分は特殊でまず舌を舌状の形をした膜の中に滑り込ませるように入れてから、上と同じよう歯型と歯の位置を合わせてからまた少し噛むと奥歯が歯形に嵌り下のマウスピースも手で触るくらいではピクリとも動かない。

マウスピースをつけたあと、少し化粧直しをしてから化粧室を出てYの元に向かい、Yの前の席に座った。

『どう、見た目ではまったくわかんないけど、ちゃんとつけれたかな?』

「はあぁ」(はいと言ったつもりが舌がほとんど動かせないので、間の抜けた返事になってしまった。)

それをみて、Yが少し吹き出し気味に笑いながら、

『良いね。少し口あけて見せてよ。』

と話しかけてきたので、周りを気にしながら少し遠慮気味に口を開いて見せた。

『それくらいだと傍から見る限りはそんなものつけてるなんてまったくわからないね。良いねやっぱり。作らせた甲斐があるよ。』

ウエイトレスが、アイスコーヒーを二つテーブルへ運んできた。智美は口から「ありがとう」といいかけて、思わず言葉を呑み込んだ。

(あぶない、超呂律の回らない言葉出すとこだった。)

と思い、ふとYを見ると俯きながら肩が震えてる。

(笑われているのが何か少し悔しかった。)

その後、Yは話しかけることなく、智美の仕草の一挙手一投足を見ているだけで楽しそうにしていた。智美も話せないので、目が合うたびに照れ笑いをしてごまかしているという時間が流れていた。

 

二人の沈黙で時間が過ぎている間に、智美が付けているマウスピースの構造を補足すると、現在付けている状態で自然に外れる事はない。外そうと思えば力を入れて引き剥がす事が可能である。マウスピースと歯の若干の隙間に歯科用の医療接着剤を流し込めばより安定感は増すがマウスピースをはがす事が困難となる。医療用接着剤以外にも止め螺子での締め付けも可能である。ただこれも締め付けすぎると歯を破損させるので締め付けの際にはかなり注意を必要とする。

またマウスピースにはアタッチメントを付けることで、口の開閉を自由にコントロールすることが可能となっている。アタッチメントを使用する際医療用の接着剤での固定や止め螺子での固定を施しているのであれば、より強固に顎関節のホールドが可能となる。

また取り付けるアタッチメントにもいくつかの種類がある。

 

手動で開閉度合いを調整するタイプの特徴として、

シンプルで装着時に違和感が少ない。

サイズが小さく不自然な感じが少ない。

 

自動で開閉度合いの調整が可能のタイプの特徴として、

可動用のモーターが取り付けられているため、口に装着した際口腔内の余裕がなくなる。但しモーターは脱着も可能で、開口時のみモーターの脱着が可能。モーターを取り外した際は開口状態を維持される形となる。

可動モーターはディルド型と通常型の2タイプがある。

 

次に舌の動きを封じているカバーも特殊な仕様が施されている。

舌を封じるように覆うカバーは根元付近での脱着が可能である。理由は会話を出来るようにするためというより、使用者が口姦を目的とするときに楽しめるようにするためである。

さらにその舌カバーには仕組みがあり、舌をほとんど動かせなくすることで言葉を封じる代りに、カバー先端ついているボールや極小スイッチを不自由な舌で転がしたり押し込んだりする事でマウス機能が使え意思表示が可能となる。

尚このマウス機能は舌カバーのみでなく、舌カバーを外した際ディルド型のマウスを挿入し扱わせる事でも使用が可能となる。

舌カバーが見た目的に言葉を封じているのに対し、ディルド型は挿入する事で言葉を封じ、さらに舌の動きのトレーニングさせる目的にも使用が可能となる。そのためディルド型はディルドの軸に舌を絡ませ軸に複数埋め込んであるボールを回転させ押し込む事でキーボード的操作も行なう事ができディルドのうら筋にあるボールを回転させる事でポインター操作も行なえる。

いずれもマウス操作に慣れるまで、かなりの練習は必要とする。

智美が装着したマウスピースは支配する側が装着者の自由を封じながら、自由に楽しむための構造に特化させた器具である。すなわち開放するときまで、基本部分は外す必要が無いもので医療用接着剤とか歯に穴をあけ固定する事で生涯外さなくても使えるものを想定して考案されたものである。

 

智美は舌が動かせないので、普段の何気ない仕草でも違和感がある。

たとえばアイスコーヒーを飲む行為。普通にストローを加えて吸って飲む。マウスピースは付いているが、顎関節は自由に動くのでストローを吸う事には問題は無い。

ただ、舌がほとんど動かないので飲み込む時に少し飲みづらい感じがするが、それもすぐに慣れてきた。飲んでいるコーヒーの味はほとんどしない。逆に舌を動かしていないためか唾液がよく出てくる。舌を覆うカバーの中が唾液でぬるぬるした感覚に包まれている。コーヒーを飲んでいるのに唾液まみれの感覚に襲われる。

だがこんなことも始まりの序章に過ぎないのである。

 

作:Satomi

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[小説] 約束Ver2 ~プロローグ~」への3件のフィードバック

  1. 半永久的装着可能であるのに、
    脱着は管理者勝手に…
    装着時には食べ物の味も感じられない、私が今まで見た開口機の中で最高だと思いますね。

    • つたない小説を読んでいただいた上にコメントありがとうございました。

  2. ピンバック: 約束Ver2 ~新たな器具~ – satomi Ver.erotic

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